プラチナ文庫2011年
医師(32)×詐欺師(21)
親に捨てられて養護施設育ち、中卒で社会に出たものの居場所がなく、男を手玉にとって金を巻き上げる「恋愛詐欺師」をなりわいとする蓮(れん)と、そのカモである加賀谷の純愛ストーリー。
世の中不公平だぜ、持ってるやつから巻き上げて何が悪い、という蓮の視点で描かれているが、詐取した金はコツコツ貯金して「詐欺から足を洗って自分だけの家を買って犬と暮らすのが夢」という蓮の心根は、とってもまっとうなのである。
大病院の院長の長男である加賀谷はシンデレラストーリーによくある男前で大人な攻め様ではなく、ホモが親バレして勘当されるような要領が悪くて、人付き合いの下手なお坊ちゃまとして描かれている。
特に容姿が悪いとは書かれていないが、印象として見た目もぱっとしないイメージ(私の中ではなぜか三谷幸喜のようなルックス)。
まさに絶好のカモで、簡単に金を巻き上げられるのだが、あまりの不器用さに蓮も引き際を見極められないうちに、ずるずると居心地がよくなってしまう。
このままいい関係に?なんてことにもちろんなるわけはなく事態は急転して、蓮は逮捕される。
この話のいいところは、実刑になった蓮が、ちゃんと自分の罪を償ってから幸せになるところ。
凪良さんはこういう真面目なところが持ち味だと思う。
本当にいや〜な人間が出てこない。みんなそれなりに一生懸命生きている。
そういう意味では金の苦労が全くない人生を生きている加賀谷の設定がちょっと甘いかなという気もしないではないが・・・両極端な環境で育った二人の奇妙なバランスを描きたかったのではないかと。
そもそも加賀谷が金持ちでないと成り立たない話だし。
凪良さんはもう新人とは言わないかもしれないが、好調キープ中である。