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交渉人は愛される 榎田尤利
 SHYノベルズ2011
ヤクザ(33)×交渉人(34)

やっぱ、人間なにごとも最後まで諦めたらダメなのよ。
諦めたときが終わり・・・ということを私に教えてくれたこの夏のなでしこJAPAN・・・と、交渉人・芽吹章。

「ラブ&トラスト」シリーズが終わったときはがっかりしたけど、その後に始まったこの交渉人シリーズは、シリーズとしての面白さ、完成度は大きく進化したと思う。

記念すべきシリーズ1作目「交渉人は黙らない」のプロローグは、一人の老人(実は周防組組長)が、甘味屋で抹茶白玉スペシャルパフェを食べながら、交渉人・芽吹の仕事ぶりを偶然耳にするというシーンだった。
そしてその偶然がラストのオチに繋がるのだが・・・何回読み返しても、この主人公の登場のさせかたは上手い!と思う。

このシリーズ、毎回、芽吹の依頼された仕事が兵頭の利害と対立して、二人の間に緊張が生まれるというのがお約束だが・・・最大の危機は前作で乗り越えたので、さすがにもう使わないかなと思っていた。

ところが、予想に反して今回はこれまで以上にストレートな利害の対立になる。

1作目の悪役である万里雄は、一つもいいところのない完全なヒールで、シリーズ7作目までしぶとく生き残り、それどころか死期の迫った万里雄の父にその救出を依頼されてしまう。

自分でも悶々としてるけど、キヨにもドM認定されちゃったけど、なんでそんな仕事を引き受けてしまうのか。
そもそも正義でもなんでもない、ヤクザ同士の揉めごとに介入するなんて・・・ヤクザの頼みというより、同級生の父親の頼みを断れなかった芽吹章、寅さんマニアだけあって人情の人だから?

いや、やっぱりドMなんでしょう。
困難なほうへ困難なほうへ自分を追い込んでしまう。

そしてそんな芽吹を、そういう男なんだよねと、芽吹ネゴオフィスのメンバーも、兵頭も、そして読者ももうすっかり理解している。

話は早い話、薬物をめぐる万里雄と周防組のメンツの問題で、つまりシリーズの出発点に繋がっている。
でも芽吹と兵頭の関係は、あれから6冊+スピンオフ1冊+小冊子1冊分の歴史を経て確かなものに変わった。
16年ぶりの再会シーンはあんなだったのにねえ・・・いまやお互いを知りつくし、「愛と信頼」で結ばれたパートナーである。

そして最後に、そんな二人のことをよく理解している老人と芽吹とあんみつで、一つの地点に到達する。
言ってはなんだけど、エダさんでこんなにうまくまとまったシリーズはかつてない(笑)。

プロローグとエピローグだけが芽吹の一人称ではないのがこのシリーズの様式だが、最後の最後に思いがけない甘〜いエピローグ、ヒューヒュー!と冷やかしつつ、ブラボーと拍手喝采の着地である。

話はここでひと段落ということで、この話の続きは書かれないかもしれないが、芽吹章という人間は、まるで実在の人物のように私の中に生きていて、今日も一人ボケ突っ込をしながら、もうからない仕事に走り回り、兵頭の舎弟たちと漫才を繰り広げている。

今日もまた、危険な目に遭ってるかもしれないけど、心配はしていない。
兵頭(と七五三野)がついてるからね。



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