SHYノベルズ2010年
探偵(31)×刑事(31)
最初に読んだ高遠作品が「
世界の果てで待っていて〜天使の傷跡」だった。
その後、これより以前のものも含めて読んできたけれど、こういう甘味のないハードな路線ってこれだけなのだ。
これだけ別人みたいな気がする。
だから続きが出ないのかな・・・と思っていたけれど、シャレードの
レストラン三部作、ルビーの
ナル准教授で最近絶好調の作者がついに続きを書いた。
前作から
5年ですよ。
その間一度も再読してないんだけど、どうしても手離すことができなかった。
その理由さえ忘れかけていたけど、このたび再読して思い出した。
渋谷のはずれに事務所を構える元刑事の探偵、黒澤統一郎と渋谷署で元同僚だった櫂谷雪人。
1冊目の中では「誘拐された双子の片割れを探す」という依頼された事件は解決するものの、黒澤の背景も雪人との関係も過去のエピソードとして出てくるだけで、ボーイズラブ的なロマンスもエロもないという、じっみーな話。
それでも、これはなにかとんでもない話のプロローグなのではないか、という手ごたえはあった。
そして5年たってやっと動き始めた物語は、じわじわと大きな山を登り始め、(作者いわく)ジェットコースターが急勾配を登りきった頂上で止るように「つづく」になっている。
え〜〜?ここでつづく? そんならどうしてもっと早く続きを書いてくれなかったの(恨)・・・。
今回も、ハード&ビターです。
依頼された事件は、未成年殺人事件の犯人探し。
それはそれで警察小説っぽくかっちり書いてるが、事件を挟んで探偵と刑事という立場で対立するの二人の間の溝はますます深く広くなり、二人の関係はいっこうに進展しない。
一昔前のBLの、3冊くらい読まないとキスもしないというようなテンポの遅さとは違う。
2人を金縛りにしている、今にも決壊しそうな情念が濃厚でエロい。
やっぱり統一郎という男のフェロモンが・・・ナルでもコワモテでもない、自然に構えてるのに、女も子供も「探偵さん」と頼ってくる懐の深さ。
それでいて心と肉体に深く刻んだ傷は誰にも見せない・・・見せるとしたら雪人だけなんだろうけど。
「今晩だけ泊めて」とすがる女を「悪い」と引きはがし、惚れた男に「もうキスはしないと決めていたのに」などと言う、ハードボイルド=
男のやせ我慢大会。
この話の行方はいったいどこへ?
「世界の果てで待っていて」というタイトルは、1冊目の双子の事件にかかっていると思っていたけど、そうではなかったのね。
たとえこの地上で結ばれなくても世界の果てでお互いを待つ・・・そういう結末でもいいと思いつつ、この続きを待つとしよう。
(そんな5年も前の本持ってないという方には、今回同時に新装版が出ていますのでこの際どうぞ)