画家(30)×警察官(34)
「うちのホンカン」みたいな(古いっ!)
駐在さんもので続くのかと思っていた
慈英×臣シリーズ、記憶喪失とはまた
ベタベタにベタな・・・。
長期カップルで「記憶喪失」っていうと、遠野春日先生の
「情熱の結晶」が思い浮かびますが・・・あれも攻めが記憶喪失になって恋人のこと
だけ忘れてしまうという話だった。
作家なら「記憶喪失」ものは一度は書きたいよね。うんうん。
でも少なくともBL作家としては一回しか使えないカードで、それをどこで切るかといったら、崎谷さんの場合やっぱりここか・・・と思いました。
BL小説における「記憶喪失」ものには、一方的に忘れられて関係がすっかりなかったことになってしまう悲劇・・・というひとつの定型がある(そうじゃないパターンもありますが)。
それが夫婦(男女)だったりした場合、「7年一緒にいましたが頭打ってぜんぶ忘れちゃいました」では済まないだろう、普通。
だが崎谷さんは、そんな同性カップルという禁断の関係ゆえに生まれる悲劇・・・というのを書こうとしたわけではないようだ。
情熱シリーズの佳人さんは遙さんに忘れられて、本当のことを言うこともできずさんざんな目に逢うのだが、この話では忘れられるのは臣さんでも、可哀そうなのはむしろ慈英のほうである。
このカップル、カミングアウトこそしていないが、臣の実家代わりの家族は公認だし、慈英の少ない親戚・知人も関係を知っている。
みんな大事な恋人を忘れてしまったひどい男・慈英を非難しているのに、臣だけが(ショックを隠して)病気だから仕方がないんだ、という態度をとる。
7年間大切にされたからもういいよと、慈英を東京に帰そうとさえする。
恋愛体質のくせに自信がなくて、いつ捨てられるかといつも怯えていた臣が、動揺しつつも慈英に対しては終始落ち着いた大人の態度で接していたことが、このシリーズを最初から読んできた読者には感慨深い。
臣さんも愛されて、やっと大人になったんだ・・・34歳だしね。
そして、慈英は天才画家かもしれないが、やっぱりバカな子・・・。