キャラ文庫2009年
整形外科医(32)×元弁護士(32)
新婚旅行中に、突然砂漠の王に拉致され性奴隷にされた3年間。
生還はしたけれど、将来を嘱望されていた有能な弁護士・夏目礼一郎は、下半身の自由を奪われ生きる気力さえ失っていた。(出版社あらすじより)
砂漠で性奴隷って・・・。
これだけ読んだらトンキワ・アラブ物かと思うよね、普通。
ところが実は
砂漠で性奴隷はプロローグで、内乱に乗じて王宮から脱出、
貞操帯をつけた姿で発見・救出された礼一郎の、シリアスな
社会復帰の物語なのだった。
主治医の晴隆(はるたか)は、元同級生で元妻の従兄弟。
といっても2人の過去に特別な何かがあったわけではない。
さらに言えば、礼一郎をサポートする医師は晴隆だけでなく、精神科医の松本、その夫で晴隆の先輩のスポーツドクター、砂漠で彼を発見したNGOのドクターがいる。
医師としては彼らのほうがずっと成熟していて、礼一郎の心と体の傷を治そうと親身になっている。
開業医の家に生まれたお坊ちゃま晴隆は、なんというか今どきの若者で、想像を絶する体験をした人間に対して、どう接していいのかわからなくて腰が引けている。
人としての尊厳を踏みにじられた3年間の結果、髪は真っ白、両足は膝から下が麻痺したまま歩くこともできない。
その上、奇跡的な生還がマスコミをにぎわしたことによる二次被害を受け、せっかく生きて日本に戻ってきたのに、生きる意欲を失い死ぬことばかり考えている・・・こんな難しい患者を、晴隆は主治医としても元同級生としても、持て余しているし、礼一郎も晴隆を信頼していない。
そんなマイナス地点からお互いに少しずつ近づいて恋愛関係になる、という展開が新鮮だった。
まあ晴隆のアドバンテージは「独身」だったってことなんだけどね。
砂漠で性奴隷(←何度も言わなくても)はちょっとした?サービスだけど、これは性犯罪被害者がどうやって立ち直っていくかという話でもあるし、めったにない過酷な体験をした人に、回りの人間はなにをするべきなのかという話でもある。
水無月さんってこれまでにたまたま読んだものが「意外と普通?」だったんだけど、3人の男の子を育てているシングルマザーという話を知り、その私生活ダダ漏れブログを読んだら、これがなかなかスゴイ。
こういう小説を書くわけだなと納得。
もう少し読んでみようかな・・・(アラスカさん、まだブログ下げないでね!!)。