キャラ文庫2009年
会社社長(30代)×フリーター(19)
そこですかさず直線的な動きに変えて形意五行拳の鑽拳を打ち込むと、向かうからも同じ拳が返ってきた。
こういう表現がいっぱい出てくるBLっていったい・・・ほとんど格闘技ものか?っていうくらい、リングで戦っている場面が多いのである。
8歳のとき中国大陸から母親と二人で日本に来た姿慧(ツェイフェイ)は、祖父に仕込まれた中国拳法の使い手で、病気の母親の医療費を稼ぐために、違法な賭け試合に出て金をかせいでいる。
水原さんのヒロインといえば暴力に痛めつけられるのが定番だが、今回は「殴られるより、断然殴っている回数のほうが多い」という戦うヒロインなのだ。
すべては母親のため、病院の支払いに追われながら、毎週、賭け試合のリンクに立ち、自分より大きな敵を倒す無敵のヒロイン。
その美貌に目をつけた興行主の簗瀬(やなせ)が、パトロンにつく。
金髪に染めさせ、豪華な衣装をあつらえて美しく飾り立てる・・・商売のためみたいなことを言っているが、100%アンタの趣味でしょう・・・。
拳法は強い姿慧だが、精神的には幼く純粋で、ママの病気を治すことしか頭にない。
簗瀬に愛されているのに、全然気がつかず、自分は商売道具として利用されているだけだと思い込んでいる鈍いヒロイン・・・というところには、水原作品の特徴が出ている。
でも、攻めの愛情表現が屈折しすぎていて、それじゃわからんだろう・・・というのではなく、簗瀬は(水原さんにしては)わりとわかりやすく愛情を示しているのに・・・拳法とママのことしか考えられない姿慧には全然通じないのだ。カラ回りしてかわいそうな簗瀬。
悪者に一服盛られて押し倒されあわや・・・という、お約束の姫君危機一髪も、王子様に助けられるのではなく自力で敵を倒して逃げてくるところはなかなかいい。
そして、貧しくも親孝行なヒロインは
「俺がほしいのはおまえだけだ。金でも物でも必要なものがあれば好きなだけとっていけばいい。だからそばにいてくれないか」
と、お金持ちに望まれて幸せになるという・・・格闘技シンデレラものでした。
簗瀬の秘書で、義足の美形、鄭(ジエン)とその彼氏の刑事という魅力的な脇カップルが登場するんだけど、これって何かのスピンオフでしたっけ?
それともこれから書くつもりなのか?