ディアプラス文庫2009年
教師(34)×教師(23)
ドイツの王子様ものに続くいつき朔夜の新刊は、恋にオクテな新米教師が、年上の同業者に恋をしてジタバタするコメディタッチの話。
新米教師の謙吉(けんきち)は、たまたま知り合った他校の教師、達川(たつかわ)に口説かれてホテルについて行くが、土壇場で怖気づいて、達川がシャワーを浴びている間に逃げてしまう。
出会ったその日とはいえ、行きずりの相手ではない。お互いの身分も名前も明かし、酒を飲んで意気投合した上での大人の行為だったのだが・・・。
ただ単に初めての経験に怯えて・・・という女の子的な理由だけじゃなく、
男の子の重大なコンプレックスが原因になっているところがミソ。同性が相手だからこその理由である。
このコンプレックスは、イザ初体験のときに達川をして「
見せてごらん」と
スケベ全開モードにさせる効果を発揮している。
いつきさんが上手いなと思うのは、受けの性格を単純に臆病な乙女とするのではなく、人の嫌がることも引き受けてしまう「お人よし」の性格と、いい男に誘われて舞い上がっているのに恥をかくのが怖くて逃げてしまう見栄っ張りなところが裏表になっているとするところである。
社会人1年生と10年選手というのもいい組み合わせだ。
10年目だってまだ若僧だけど、昨日まで学生だった新人から見れば余裕の大人に見える。
まだ生徒と年齢の近い謙吉にとって、達川はあこがれの
スーパー教師であり、さらに恋愛も
デビュー前の謙吉には、百戦錬磨の
恋のエキスパートに見える。
表題作も書き下ろしの「ライバル同士の恋だから」も謙吉視点なので、達川は終始「余裕の大人」に描かれているのだが、読者目線でみてどうだろうか。達川ってほんとにそんなに「できる男」かなと疑惑がわく。
自分ではスマートに口説いたつもりで、詰めが甘いから逃げられてるし。
自信たっぷりのキザな態度に下心バリバリ、スケベ心見え見え、肝心なところでハズす奴・・・実はそういう男なんじゃないかと。
そのあたり、きっと彼の教え子の女子高生はちゃんと見抜いてると思うな。
あんなあだ名をつけるあたり・・・。
エロは短い。
短いのはいいんだけど、あまりにもギリギリ最後に「本番」を持ってきたために余韻がない。
作者はこれまで続編とかシリーズとか書いていないが、これは続編があってもいいんじゃないかと。
下心満載のかっこ悪〜い攻め視点があれば、本作もより面白くなるかと思います。