第18回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭 が、7月10日から新宿で開幕しました。
昨年はおっかなびっくり初めて足を運びましたが、今年は張り切ってオープニングイベントから4本見てしまった。
これから見る予定の方には
ネタバレ になりますが、後半の
青山スパイラル 上映は当日券で見ることも可能なので、感想を書いておきます。
『イングリッシュマン・イン・ニューヨーク』(2009年イギリス)
独特のファッションとオネエ言葉で毒舌を吐く老作家・・・日本で言えばあの人とこの人を足して2で割ったかんじ?
スティングの名曲「An Englishman in New York」のモデルとなった実在の人物
クエンティン・クリスプ の晩年を描く。
70歳を過ぎてからNYに渡り、時に同性愛者のオピニオンリーダーと持ち上げられ、HIVに関する失言で干されたり・・・でもどんな人生も老いからは逃れられない。
70歳以上はみな「年寄り」だと思ったら大間違いで、70代、80代、90代の肉体的精神的な変化を見事に演じ分けるジョン・ハートの至芸に思わず「
成駒屋っ !」(←屋号に意味なし)と声をかけたくなった。
ラストに流れるスティングの「An Englishman in New York」の印象的なリフレイン
I'm An Ailen I'm A Legal Alien 私は異邦人、合法的異邦人
その本当に意味するところがやっと腑に落ちた気がする。
この曲のモノクロのPVに登場する上品な老紳士が当時のクリスプ氏本人なのだそうです。実物はけっこう美しい人です。
『パトリックは1.5歳』(2008年スウェーデン)
養子センターの斡旋で1歳半の赤ちゃんを迎える準備をしていた同性愛カップルのもとにやってきたのは、凶悪そうな15歳のパトリック少年だった・・・書類のミスで15歳が1.5歳になっていたのだ。
いくらスウェーデンでも、男夫婦が子供を養子にするのは容易ではない。かわいいベビーが回ってくるはずもなくて、要は引き取り手のない育ちすぎた子供を押し付けられたわけ。
ゲイにもいろんな人がいると思うんだけど、奥さん?のゴランは「
郊外の庭付き一戸建で子育てとガーデニングするのが夢なの 」って人で、ダンナのスヴェンは全身にタトゥーが入ってる「
昔はオレもワルだったんたぜ 」という
熊男 。
熊ダンナはゴランに惚れてるから、この「
一戸建ドリーム 」に付き合ってたんけど、ワルガキに
新婚家庭 をかき回されて「やってられないぜ」と切れて出て行ってしまう。
残されたゴランは、パトリックに新しい家族を見つけるまではと奮闘する。
スウェーデン映画って初めて(たぶん)見たけど、この国の中流階級の生活というのが興味深い。
素敵な家に素敵な庭・・・みな似たような暮らしぶりだから保守的でご近所の目もけっこううるさい。なにもこんなところで堂々と男夫婦やらなくても・・・周囲の住民も困惑するよね。
でも、たぶん医師であるゴランも自分がこのような家庭環境で育ってきたから、自分にこういう「家庭」が持てない理由がないって考えてるんだろうな。
やんちゃな旦那と優しい奥さんが養子問題を巡って対立、笑いあり涙ありのハートフル・コメディってやつです。
日本人基準だとスヴェンもゴランも体格的に
SG(スーパーガッチリ)系 なんだけど、なかなかお似合いのカップルで、最初は「クマゴロー」だと思ったスヴェンにも全然抵抗がなく・・・悪ガキ・パトリックがだんだん子供らしいところを見せていく演出にホロリとさせられてしまった。