茜新社 2009年
男は行きずりで
ワルで調子こきの
イカレヤローだったが
オレたちはトワの恋におちた
『ラブ&カタストロフィー』(1999年)
あのエンディングから10年、あの2人が帰ってきた!!
あの2人とは、エロ漫画家の菊ちゃんと正体不明の男、イチロー。
10年のブランクを経て再開された「イチ×菊」を読むと、語シスコがチャージを終えてよりパワーアップしたことがわかる。
たとえば『
恋の門』。
デリヘルボーイのレイジにノンケの酒屋が一目惚れ。菊たちがレイジは男なんだからやめとけと言ってもきかず、純愛まっしぐら。
たとえノンケであっても男に惚れた時点でノンケでなくなるのがBLなんだけど、普通の「お付き合い」を経てセックスまでしたところで、「やっぱり男はダメでした」ということでレイジが失恋する話。
あるいは『
それぞれのマイウエイ』。
エロ妄想の対象は男で、明らかにゲイなのに「自分は普通でありたい」ために女と同棲し自分を偽って生きている編集者の話。
ちょうど並行してsatoさん(現在ブログ休止中)から借りた『男性同性愛者のライフストーリー』という研究書を読んでいて、自分のセクシャリティーを認めるのに時間のかかるゲイも多いことを知ったので、この話には非常にリアリティを感じた。
『
恋する惑星』はお兄ちゃん一筋のブラコン少年が、兄の結婚に大反対、困りきった兄は弟にゲイの友人を紹介する・・・何度も意表をつく展開で、弟はブラコンを無事卒業する。
どれもこれもBLらしからぬ展開ながら、語シスコはどこまでもマイウエイ。
菊とイチローがメインになるのは『
世界の中心で愛なんか叫べねーよ』と『
マフラーの揺れる間に』。
イチローという男がBLの攻めとして
規格外れである。
そんじょそこらのオレ様攻めとはケタ違いの破壊力。
エロ漫画家ではあるがひたすら必死で漫画を描きコツコツ貯金している堅実な
勤労青年の菊を文字どおり
骨までしゃぶるロクデナシ。ヤクザよりタチの悪いどチンピラ・・・なのにどうしたことか憎めない。
ロクデナシという名の
自由人。一種の
アナーキストと言ってもいいかもしれない。世界の中心にイチローがいるのだ。
イチローに貞操観念はない。そんなことは菊も期待していない。
それでも2人は分かちがたく愛し合っている・・・語シスコにしか描けない
純愛である。
相変わらずネーム(特に罵倒語)が素晴らしくて、この1週間毎日一度は読み返しているが、一番好きなセリフは・・・
『
キンタマ揉んですべてが帳消しになると思うなよ・・・』