テクニカルライター(34)×無職(19)
徳間書店キャラ文庫 2008年
水原とほると山田ユギ・・・珍しい組み合わせに思わず手にとったらこれがもう・・・水原とほるで泣くとは思わなかった。
ある日突然、隆次のマンションに叔父の連(れん)がやってきて、2か月だけ預かってくれと、19なのに発育不良で性別不明のアズを置いていく。隆次はゲイだが、がっちりした男を抱くのが趣味で、中性的で貧弱な少年は対象外。
最初はただただ「面倒」で虐待に近いほど邪険にしていたのが、天使のようなアズの魅力にほだされていく。
よくある話っちゃそうだけど、絵画の才能があるらしいアズのイノセンス、50に近い美丈夫の叔父・連のアウトサイダーな魅力が際立っている。
仕事も順調、「面倒」のないセックスフレンドもいて、快適なシングルゲイライフを送っていたつもりの隆次は、日本語もおぼつかない難民のようなアズを一方的に押し付けられてすっかりペースを崩し、それまで理想的だと思っていたセックスフレンドとの関係も、実は大きな勘違いだったことに気がつく。
ゲイということを除いても、仕事もそこそこ順調で快適な独身生活を送り、深い人間関係を築くのが「面倒」だから結婚せず一人でいるという人はこんにち珍しくない。そういう意味で隆次はある種の典型的な都会の生活者だ。
しかし魔法にかけられたようにアズを真剣に愛してしまった隆次は、ある意味結婚より「面倒」なことを背負い込んでしまうのだが、アズのためならどんな面倒なこともやってやりたい、それが自分の喜びだと思ったとき、隆次は34歳にしてやっと大人になるのである。
水原とほるといえば、容赦のない暴力描写だと思っていたが、しばらく目を離しているうちちょっと作風が変わったらしい。
容赦がないといえば容赦のない部分もあるんだけど、この作品ではそれはちょっと違うところで発露されている。もう10月ですがこれは今年のマイベスト10に入るかもです。
未読の作品も読んでみようかな。
山田ユギの描くオヤジ(連叔父さん)がかっこいいぞ。