空間プロデューサー(30代)×日本画家(24)
シャレード文庫 2008年
「水原さんの『きんしゃのにえ』が良かったよ」と人に教えられ、手帳に書きとめようとして「きん舎のにえ」・・・「舎」しか漢字で書けなかった。トホホ。
攻めの年齢はどこかに書いてあったかもしれないけど思い出せない。
それより師匠(62)×弟子(24)の関係のほうがずっと印象が強い。
日本画家の大家でヒロイン紗希(さき)の師匠である、合田柳燕は「当て馬キャラ」と言うべきなんでしょうが、お布団シーンの8割がたはこの「ジジイ攻め」のご活躍なのだ。
60代の攻めというのが、BLにおいて非常に珍しいというわけではない。権力者に体を提供する・・・というシュチエーションではけっこうあるように思う。
でもあくまで「ヒロインがいらぶられる」ための小道具の一つであってジジイのエロがメインになることは少ない。
家庭の事情で絵を続けることが難しかった紗希を内弟子として住まわせ、事後承諾で夜のお勤めもさせている・・・立派にパラーハラスメントなんだけど、監禁しているわけでも暴力をふるっているわけもはない。
紗希も師匠と寝ることに嫌悪があるわけではなく、恋を知らない紗希は、父とも兄とも慕う尊敬の気持ちで懸命にご奉仕している・・・実はここがこの話の「萌えどころ」なんじゃないだろうか。(間違ってますかね?私)
いけないことだと思いつつ、よそから来た若い男に惹かれて心引き裂かれるヒロイン・・・読んだことないけど昔の「姦通小説」「よろめき小説」ってこういうものかな?
これが女性のヒロインだったら、さんざん世話になった恩師を捨てて「新進気鋭の空間プロデューサー」に乗り換える女を私は許しませんが・・・おしとやかで美しい「男の子」なら全然構わなくてよ(笑)。
老いてなお精力的な芸術家の若い弟子に対する執着は、年齢を重ねるほどにどんどんエスカレートして狂的になり、心と体だけでは満足できず、才能さえも自分のものにしてしまおうとしたところが、結果的に命取り。
誰に奪われなくても、これでは逃げられてしまうのは時間の問題でしたね。
でもちょっと縛ったり変な薬を使ったくらいでそんなに酷いことはしていないし(!?)、大切に育てていた紗希にあっさり捨てられて、老いとは悲し・・・ちょっと「ベニスに死す」でした。
それに比べると、かごの鳥のヒロインを逃がしてくれた今村はいまひとつ印象が弱い・・・いや、王子様としてちゃんと役目は果たしてるんですが、ジジイにイチから仕込まれた紗希を将来的にも満足させられるのか、ちょっと心配。「踏み台その2」になったりして。