会社員(24)×大学生(18)
アイスノベルズ2001年
かなり長い間未読箱に寝かしてた本ですが、BLとしては地味ながら「誰かと一緒に暮らすとはどういうことか」というところに妙に説得力のある話でした。
両親の離婚の結果、祖母に育てられた直行は、優しく美しい妻に子供は2人、庭付き一戸建てでゴールデンリトリーバーを飼うというドリームを抱いている。それは乙女チックな結婚願望というより、こうあらねばならぬという人生の規範なのだ。
早く結婚したいという強い気持ちでいろいろな女性と付き合っても長続きししないのは、相手を自分の描いている妻の役に適役かどうかというキャスティングの目で選んでいるからだ。(いるいる、こういう人って)
直行自身も、女性との交際が続かない理由はうすうすわかっている。
そして、男の冷静さを女は絶対に見逃さない。
女という生き物には、男が自分に夢中になっているかどうかを確かめるセンサーが、生まれつきついているのではないかと思うくらいだ。
直行は、自信満々で女を選り好みしているやな男ではない。
何事もこうあらねばならぬというマイルールに縛られている真面目すぎる男なのだ。
結婚したいと言いながら、よき夫、よき父親を知らない自分にその役が勤まるだろうかという不安も抱えていて、つまり自分が見たこともない理想の家族像に翻弄されている。
そんな直行の生活に踏み込んでくるのが、親戚の下宿人、悠人(ゆうと)。
仔犬のように無邪気になついてくる悠人を最初は邪魔者扱いするが・・・。
LOVEに突入するのはほんとに最後の最後で、ほとんどが直行の家族問題と対人関係の問題に費やされている。
結末だけ見れば
「いろいろ女性と付き合っていたけど初めて本気で好きになったのが男だった」
というテンプレな話に見えるけど、直行が悠人に出会って知らず知らず変わっていく過程が多面的に描かれているところがよいと思う。