SHYノベルス 2001年
ボディガードシリーズの脇役、トム・ショルティの巻が2段組で4編。
「警部とペナルティ」「紳士からの手紙」
トムの警官時代の話。
外人ジョークは相変わらずである。フットボールの試合でトムがゴールに蹴りこんだボールの数と、口説いた男の数はどっちが多いか?
「もちろん、ボールの数だ。蛇足ながら口説いた男の球数が奇数ということはない」
この意味がわかるのにしばらく時間がかかりました(笑)。
最後にはトムが日本人研究者・御崎を恋人に得る話だが、研究バカで天然な御崎に周到にアプローチしていく「たらし」のトムという図式は、ボディガードシリーズ本編のグレイとジュンの構図とあんまりかわらないじゃん、とこれだけを読むと思う。
でもこれは、これ以外の話のオチというかエクスキューズなんだよね。
「ノブレス・オブリージ」
トム・ショルティ14歳。イギリスのパブリックスクールの生徒ながらアメリカでのサマーキャンプに参加して、森の中で遭難する。年齢も個性もバラバラな子供のグループをまとめていくトムのリーダーシップを描きながら、イギリス上流階級の「ノブレス・オブリージ」の意味を解く。
救出に来たボディガードのボス、父親ほども年齢の違うランディとトムの出逢いが描かれているわけだが、ボーイズラブの「ボ」の字もありません。「スタンド・バイ・ミー」みたいな話。
この人はこういうジュブナイルが上手いので、BLでなくても構いませんが。
「ワルツ」
パブリック・スクールの最上級生のトムと、日本から来た新入生、羽田幹との出逢い。
これはいわゆる「パブリック・スクール」ものである。
ボーイズラブはロマンスなので、基本的に「恋が成就する話」であるはずなんだけど、実はトムの恋が成就しなかった話なのだ。
一度は恋人になったトムとランディも、お互いに魅かれているトムと幹の恋も結局は成就しない。
年の差が問題なのだ。
BLにおける「年の差」カップルは、年下もうまく成長してハッピーエンドになるのが普通だが、現実に男子の14歳と19歳はかなり違うものだ。
ランディは、19になったトムが「愛されて可愛がられたい男の子」から「だれかを守りたい男」に成長したことに気づき、
「私に抱かれたいと思うあまり、私の前では15の少年のふりをしている」と残酷なことを言う。
そして、その指摘を正しいと思ってしまうトム。非常によくわかる話だが、BLとしては珍しい展開だ。
そしてトムは、守りたい対象として羽田幹を意識する。
この話ではトムと幹が付き合いそうな雰囲気で終るのだが、でもこれも結局うまくいかないんだな。(続きは「ボディガードの告白」)
上手くいかない恋の話・・・BLでは反則である。
ゆえに、ランディとも幹とも別れたあとで恋が実った話を最初におく必要があるのだろう。