現代日本BL文学入門 [ミラー]2021-01-18T06:11:41+09:00ボーイズラブ小説の密かな愉しみ
こちらはミラーブログです
コメント&TBはこちらまでhttp://blog.livedoor.jp/bokaboka3/JUGEM銀とシュガースノー 玄上八絹http://yuki-noko.jugem.jp/?eid=5592012-02-08T23:21:27+09:002012-02-08T14:21:27Z2012-02-08T14:21:27Z ルチル文庫2009年
高校生(18)×ピアノ調律師(23)
前から1冊読んでみたいと思っていた玄上さん。
しかし特殊な設定が多くて手を出しかねていたのだけど、「親の離婚で血のつながらない叔父と同居することになった高校生」というオーソドックスな設定の話...ゆきのこその他のBL作家 ルチル文庫2009年
高校生(18)×ピアノ調律師(23)
前から1冊読んでみたいと思っていた玄上さん。
しかし特殊な設定が多くて手を出しかねていたのだけど、「親の離婚で血のつながらない叔父と同居することになった高校生」というオーソドックスな設定の話があったので、「これだ」と思って読んでみました。
秋彦は、進路に悩む高校3年生。
夢はパティシエだけど、自分が本当にパティシエになれるのか、自信が持てない。
離婚してアメリカに行った母親の希望どおり留学するか、とりあえず日本で大学に進学するか・・・選択肢あるだけに決められないのだ。
こういう高校生って、俺は絶対職人になるぜと決めて、わき目もふらず進む才能あふれる主人公より等身大なかんじ。
プロサッカー選手だって半分は大卒という学歴社会の日本で、18の時点で、成績的・経済的に行けるのに「大学に行かない」という選択をするのは、けっこう大変な決断だと思う。
そんな秋彦から見たら、ピアノの調律師という特殊な仕事をしているカミカは、5歳という年齢差以上に大人に見えるはずだが、最初にしばらく保護者になってくれる「叔父さん」とだけ聞いていて、年齢を知らなかったので意外な若さに驚き、カミカの美貌と性格の悪さに感情を持って行かれて恋におちる・・・と、展開としては王道なので安心して読める。
カミカも、10代の未熟な恋の結末に引きずられているくらい若いのだけど、保護者の必要な18歳と、社会人23歳との、あと数年で縮まるであろう微妙な年頃を、視点を交互に入れ替えて描く。
秋彦に告白されて悩むカミカは、友人の安東に相談する。
「まだ子供だ」「受験生だから」とかぐだぐだ言うカミカに、
「十八で恋をしなかったら、いつすんの、そんなの」
と答える安東は、なかなか素敵な脇役。
ピアノの調律師という特殊な仕事についての描写も行き届いていて、職業物としても面白い。
しかし、男どうしは基本的に自分の恋バナはしないというのが私の認識なんだけど、BLにおいては意外とそうでもなくて、初めて男を好きになった秋彦は、学友に具体的なHow toまで相談する。
それもいまどきの高校生らしいのかも?
ちょっと(かなり?)クセのある文体も、私はOKでした。
さて、次は何を読もうかな。
]]>野ばら 雲田はるこhttp://yuki-noko.jugem.jp/?eid=5582012-01-22T10:37:00+09:002012-01-22T01:56:04Z2012-01-22T01:37:00Z最近は漫画の読み方がわからない子どもが増えているとかいう話もありますが・・・私の漫画リテラシーも相当低下してるようです。
「昭和元禄落語心中」で初読みだとばかり思っていた雲田はるこ、雑誌で読んでたじゃん。
「ハートに火をつけて」onBLUE VOL3掲載
...ゆきのこコミックス
「昭和元禄落語心中」で初読みだとばかり思っていた雲田はるこ、雑誌で読んでたじゃん。
「ハートに火をつけて」onBLUE VOL3掲載
依田沙江美のインタビュー目的で買った雑誌onBLUE Vol.3、掲載作品の中でも、引退したゲイビデオ俳優で今はゲイビ制作会社の社長をやってる苦味(くみ)さんの話は、かなりインパクトあった。
それなのに何回読んでも、あれと同じ作者だと気付かないってどうゆうこと?!
「落語心中」を読んだときは、この人がBL作品を描くとしたらホンワカしたものなんじゃないかと想像してたので、ゲイビ業界が舞台のエロ度もけっこう高いこの話と全然結びつかなかった。
でもそれは、既刊のBL作品を読んでみたらある程度当たっていて、この苦味さんシリーズがこの人にしては過激なほうなのね。
「野ばら」東京漫画社2010年
奥さんに逃げられたコブ付きの年増に、若者がよろめく話。
あれ?なんか身も蓋もない説明ですが、この四十に近い神田さんが天然(ややドン臭い)でキュート。そしてその細い腰から目が離せない武ちゃん(料理人)の男らしく実直な攻め様ぶりが好ましい。
この2人のバランスは、佐々木×如月先生(剛しいら記憶シリーズ)と同類で、私のどストライクなのである。
武ちゃんの将来を思って、一世一代の「縁切り場」を演じる神田さんだが・・・結局「うえーん」って泣いちゃう神田さんがカワユすぎてたまらんです。
なぜタイトルが「野ばら」なのかは最後の1コマでわかる・・・うまい。
もう一つ、本名「みたみつお」、ニューハーフのミミくんの初恋物語、「ミミくんのBOYの季節」も、かなりの問題作。
「いとしの猫っ毛」 リブレ出版2011年
こちらはいわゆる「○○荘もの」と言うのか、一つ屋根の下に変な人が集まって暮している群像ドラマ。
6年も遠距離でしかも清らかな交際を続けていたみいくんと恵ちゃんの、同棲物語の始まりでもある。
これまた猫っ毛でオクテの恵ちゃんがカワイイのだ。もうすぐ2巻が出る。
漫画はどんなに上手いと言われても、その絵柄や雰囲気が好みかどうかが重要で、小説以上に好き嫌いが大きいと思う。
山田ユギや依田沙江美や今市子、つまり少女漫画オリエンテッドな作家が好みの私には、久しぶりのアタリです。
苦味さんシリーズがどこに向かってるのが気にかかる・・・onBLUEを買い続けないとだめか・・・。]]>2011年こんなBL読んでましたhttp://yuki-noko.jugem.jp/?eid=5562012-01-19T21:40:00+09:002012-01-19T13:14:58Z2012-01-19T12:40:00Z2011年は忘れられない1年になりました。
直接自分が被災したわけではないけれど、2万人近い人が一度に亡くなっているという現実に対する動揺と、自分が生きてる間に収束できそうにもない原発事故に対する不安で、好きな本を読んでいてもいまいち没頭できないとい...ゆきのこ現代BL文学入門
直接自分が被災したわけではないけれど、2万人近い人が一度に亡くなっているという現実に対する動揺と、自分が生きてる間に収束できそうにもない原発事故に対する不安で、好きな本を読んでいてもいまいち没頭できないという・・・。
福島の人たちはいまだに自分の家に戻ることができず、避難生活を送っています。
そのことは1日も忘れてはいけないのですが、2011年という年を終えて新しい1年がスタートしてみると、やはり前年のことを一度整理して、リスタートすることも必要かなと感じます。
去年は記事に残していない本が多いのですが、ここに2011年に読んで心に残った本をまとめておきます。
【小説部門】
?交渉人は愛される 榎田尤利
?やさしいSの育て方 榎田尤利
?愛とはいえない(2) 榎田尤利
?ホームドラマ 剛しいら
?ペーパームーン 剛しいら
?真夜中クロニクル 凪良ゆう
?スタンレー・ホークの事件簿(?)(?)山藍紫姫子
?ダブルバインド(3)(4) 英田サキ
?恋を知る 月村奎
?君の指が好きと言ったら 小川いら
?「交渉人は愛される」いろいろあったけど、あんな甘〜いラストが用意されているとは思わなかった・・・おかげで以来、私の脳内では兵頭と芽吹がいつもラブラブしていて困ったもんです。
今年も「最後まで諦めない」を座右の銘としよう。
作家生活も10年を超えた榎田さんの安定感というのは、コメディとシリアスで書き方を変えないところにあるような気がする。
?も?も、コメディでもありシリアスでもある。
初期にはどシリアスなものも書いてたけど・・・そこが作家としての成熟なのだろうと思う。
?凪良さんも昨年は好調でしたが、あえて今後に注文出すなら、シリアスとコメディを区別しないで書いてみてほしい。コミカルなシリアス、シリアスなコメディ。そういうステージまで行ける人だと思うので。
??最近はラノベに進出している巨匠・剛しいら、BL供給量は少なめながら、ムーンライトの続編「ペーパームーン」、続きが出るとは思わなかった「ホームドラマ」が収穫でした。
今年はまた時代劇を書いてほしいな。
?秋口にふと「アレキサンドライト」を再読したら、そのまま山藍紫姫子祭りに突入。
おりしも角川文庫から続々復刊中、やっと読めた「スタンレー・ホークの事件簿?〜仮面(ペルソナ)」「同?〜葛藤(アンビヴァレンツ)の山藍流ハードボイルドが予想外に面白くて、耽美な「堕天使島」からエログロの「長恨歌」「江戸繚乱」、ややBL寄りの「永遠の恋人」まで集中的に攻略してしまった。
山藍さんは「愛と官能のロマンス小説」作家で、BL作家とは言えないと思うのだけど、華麗な文体にはあらがいがたい魅力がある。スタンレー・ホークシリーズの続きが楽しみ。
?「ダブルバインド」が全4冊で完結。
正直、途中まで迷走してるような気もしたが、完結してみれば意外に緻密な話で、途中、2人の恋愛部分が漫才化したのは、あまりにもガサツなオッサン攻め、あまりにも意地っぱりなツンツン受けが暴走したせいかもしれない。
これから読むなら4冊そろえて一気に読むことをおすすめします。
?昨年の月村さんでは「好き」もよかったけど、短編集というBLでは珍しい試みは、月村さんならでは。どれも朝チュン未満の淡い初恋話なのに、萌えがないわけではない。月村さんらしい味わいだった。
?久しぶりのヒューマン系小川いら。聴覚障害のある受けとガテンな青年との穏やかな恋。優しいいい人しか出てこないお話に癒さる。
]]>昭和元禄落語心中(1)(2) 雲田はるこhttp://yuki-noko.jugem.jp/?eid=5572012-01-16T10:58:00+09:002012-01-16T12:38:55Z2012-01-16T01:58:00Z 講談社2011年
講談社2012年
平成もすでに24年なのである。
今年成人式を迎えたくらいの若者には、「昭和時代」って私の「明治時代」くらいの感覚なんだろうなあ。
でも平成生まれの君たちも、次世代に「平成生まれだからなー」と言われる日は必ず来るのだよ...ゆきのこコミックス 講談社2011年
講談社2012年
平成もすでに24年なのである。
今年成人式を迎えたくらいの若者には、「昭和時代」って私の「明治時代」くらいの感覚なんだろうなあ。
でも平成生まれの君たちも、次世代に「平成生まれだからなー」と言われる日は必ず来るのだよ。
去年から書店でちょっと気になっていた1巻、表紙の噺家のたたずまいが今は亡き初助師匠を思わせる・・・でも青年コミックだし・・・と思いつつ作者の素性を調べると、BLコミックも描いてる人らしい。
安心して?1巻を買って読んだら面白くてすぐに2巻を買いに走った。
BLではないのだけど、この設定、この背景には、あきらかに剛しいらの座布団シリーズの影響がうかがえる(と私は思う)。
パクってるということではなくて、先行の名作への愛とリスペクトがあるという意味で。
弟子をとらないことで知られる稀代の名人に無理やり弟子入りする、刑務所帰りの元チンピラ与太郎。
親子ほどに年齢が上なのに妙に色っぽくて偏屈な八雲師匠は、女を演じれば絶品で、ヒマさえあれば都々逸や長唄や踊りの稽古をしている芸の虫。
「落語と心中する」と言って独身を貫いているところや、与太郎をお供に連れて京都に出かける場面にも、初助師匠と要の姿がダブる。
あれ?この京都駅って昔の京都駅じゃん・・・そうそう、この話の「現在」は昭和なのだった。
八雲は、早世した兄弟子で、幻の名人と謳われた助六の娘・小夏を引き取って育てている。
よもやBL展開にななるまいと思うが、若き日の八雲と助六の間になにがあったのか・・・。
2巻の途中からいよいよ「八雲と助六編」が始まり、いいところで続くになっている。
(3巻の刊行は秋の予定だそうで)
つまり、八雲師匠の押しかけ内弟子となり一人前の落語家になるべく奮闘努力する与太郎の青春と、戦中・戦後に渡る、八雲と助六の青春・・・二つの昭和の青春芸道物語なのだ。
絵も上手くて、落語の芸を漫画で表現するテクニックもある。
なにより、芸に対してシビアで容赦のない八雲師匠の、太郎に対するドSな仕打ちがすばらしい。
初助師匠のほうがもう少し手加減があったような・・・いやそうでもないか。
八雲師匠も、平成の現在、ご健在なのかどうかが気になるが・・・続きが出るのが待ち遠しい。
]]>サスペンスドラマ 剛しいらhttp://yuki-noko.jugem.jp/?eid=5552012-01-10T21:41:00+09:002012-01-10T12:45:48Z2012-01-10T12:41:00Z ショコラ文庫2012
警察官(30)×上司(32)
剛しいら2012年最初の新刊が「サスペンスドラマ」とはまたベタなタイトルだなあと思ったら、「ホームドラマ」のスピンオフだった!
ホームドラマに出てきた大飯喰らいの公安刑事、後藤の話ですよ!
...ゆきのこ剛しいら ショコラ文庫2012
警察官(30)×上司(32)
剛しいら2012年最初の新刊が「サスペンスドラマ」とはまたベタなタイトルだなあと思ったら、「ホームドラマ」のスピンオフだった!
ホームドラマに出てきた大飯喰らいの公安刑事、後藤の話ですよ!
話は「ホームドラマ」より2年前にさかのぼる。
ライフルの名手でSAT部隊で大暴れしている後藤は、公安の風間の目にとまり引き抜かれる。
日本で身長195センチって、でかいよ!
知人にいるんだけど、一緒に歩いてるとスカイツリーと歩いてるみたい。
電車に乗るとみんな見るし。
服も靴も日本では普通に買えなくて苦労してるとか。
(風間が彼に与えた変装用のカジュアルウエアはどこで調達したのかなと思ってしまった)
そんな大男の後藤は、警察一家の長男で、学生時代は柔道で日本代表クラスという純体育会系、人の5倍は食べるけど太りはせず、過去のトラウマで女性恐怖症。
この設定だけで、どんぶりでご飯持って来い!だな。
風間は、家柄よし頭よしルックス良しのパーフェクトな男だが、生粋のゲイ。
後藤に目をつけたのも好みの男だからとはいえ、最初は単に部下にするつもりだったのが、女性恐怖症と告白されて、俄然「おとしてやる」モードに。
風間はいわゆる襲い受け、関係を結んでもあくまで上下関係があるので、辰巳と安藤の関係に似ていところもある。
でも坊ちゃん育ちの風間は辰巳ほどの強靭さはなく、後藤の気を引こうとして、料理を作ったり女装してみたりと、けっこう女々しいところがあったりする(なんだかんだ言ってこの人絶対、女装趣味があると思う)。
そして武器を持たせた後藤があまりにも人間離れした最終兵器なので、徐々に風間が後藤に依存していくような関係になっていく。
とにかく私、大食い男、ジャンボ後藤に萌え萌えです。
ガンガン肉食って、エネルギー満タンになった後藤に怖いものなし。しかもやさしい。
ただ、恋の駆け引きなどできるタイプではなく(そこも萌え)、とっくにお互い信頼し合い愛し合っているのに、仕事上の立場の変化もあってお互いの気持ちを見失いそうになる。
そこで時間軸がホームドラマと合流し、後藤の元同級生・八千草+真々田夫妻の息子が誘拐されるという事件が起きる。
「ホームドラマ」とは話が別なので、前作を読んでいなくても問題ありません。が、「ホームドラマ」は、父子のホームドラマにサスペンスが押し寄せてくる話、「サスペンスドラマ」は、サスペンスな生活を楽しんでいる公安警察官が、惚れた男にいそいそと手料理を用意したりするホームドラマが重なってくる面白さで、見事に対句になっている。さすが巨匠だ・・・。
「自分、そんないい加減な男ではないです」
↑こういうセリフに萌える人には、ぜひお勧めしたい剛しいらです。
]]>純愛、熱愛、そして純愛 剛しいらhttp://yuki-noko.jugem.jp/?eid=5542012-01-07T17:29:00+09:002012-01-07T08:31:55Z2012-01-07T08:29:00Z ガッシュ文庫2012年
フリーカメラマン(27)×写真店(25)
新年、あけましておめでとうございます。
2012年の1冊目は「純愛もの」でした。
自分が「尽くしタイプ」じゃないので、いわゆる傲慢なオレ様攻めに受けが翻弄される話はあまり好みでは...ゆきのこ剛しいら ガッシュ文庫2012年
フリーカメラマン(27)×写真店(25)
新年、あけましておめでとうございます。
2012年の1冊目は「純愛もの」でした。
自分が「尽くしタイプ」じゃないので、いわゆる傲慢なオレ様攻めに受けが翻弄される話はあまり好みではないのだけど、さすが巨匠、ひたすら耐える健気ヒロインではない。
海に近い地方の写真館を一人で守る望(のぞむ)に、5年前に別れた恋人が事故で半身不随になったという知らせが届く。
東京での学生時代、自分勝手でオレ様な恋人、櫂人(かいと)にさんざん振り回された挙句、理由も明かさずに突然30万貸してくれと言い出し、断ると家から盗んで来い、体を売って稼げと言われ、ついに限界が訪れる。
櫂人のことが好きで、理不尽なワガママを許してきた望だが、それをやったらお互いがダメになるという最後の分別で、大学をやめて地元に戻り、倒れた祖父の介護をしながら写真館を継いだのだった。
望は5年ぶりに再会した元恋人を半ば強引に引き取り、介護生活が始める。
かつては好き放題に自分を押し倒していた傲慢な恋人は、今は一人で歩くこともできない。
やたら張り切って介護する望の中に、これで自分だけが彼を独占できるという喜びがあることも否定できない。
しかし別れて5年、祖父の介護を経験した望は、櫂人の病的なまでのわがままと人間不信の理由を理解し、再び櫂人を愛し始める。
「望、そんなに俺のことが好きなのか?おまえを抱いてやることもできないのに」
「そんなことどうでもいいんだ。こうしていられるだけで・・・幸せだから」
「俺以外の誰かを好きになればいい。そうすれば、寂しい思いをしないですむのに」
「櫂人を好きでいちゃいけない理由ってある? あるんなら教えて?」
体が回復したら、櫂人は出ていくかもしれない。
見返りを求めないと言えばウソになるけど、それでも望は櫂人を愛したいのだ。
愛とはきっと、愛する者の幸福を一番に考えられるものだけに許される感情なのだ。
だとするとつまりそれは、限りなく親の子に対する愛情に似ている。
一見、お互いの愛情のバランスがとれていないように見えるけど、人を愛する幸せ・・・それが純愛というものなのだろう。
それでも一応BLなので、櫂人の男性機能も徐々に回復、最後はハメ撮りまでしちゃうんですが、エロ面は淡白で、新春に「愛するとは?」と考えるのにふさわしい1冊でした。
]]>優しいSの育て方 榎田尤利http://yuki-noko.jugem.jp/?eid=5532011-12-31T16:41:00+09:002012-01-03T07:42:49Z2011-12-31T07:41:00Z 2011年SHYノベルズ
痛いのは大嫌い。
ピアスの穴だって開けたくない。
でもなぜか、文学としてのSMは嫌いじゃない。
「O嬢の物語」を読んだのは高校生のときだった。
エダさんもきっと、そういう「他人事としての」SM好きなんだろうなと思う。
最近では...ゆきのこ榎田尤利 2011年SHYノベルズ
痛いのは大嫌い。
ピアスの穴だって開けたくない。
でもなぜか、文学としてのSMは嫌いじゃない。
「O嬢の物語」を読んだのは高校生のときだった。
エダさんもきっと、そういう「他人事としての」SM好きなんだろうなと思う。
最近ではPetLoversシリーズの中にそれっぽいのがちょっとあるくらいだけど、初期のweb小説ではSMテイストのものけっこう書いていたっけ。
でも商業誌で、本物のSM愛好家を真正面から書いたのは、これが初めてではないだろうか(何か忘れてるのがあったら教えてください)。
毎度のことながら、エダさんってうまいよな〜とうならせられる書き出しは、「殿下」という仇名の宮准教授の登場シーン。
舞台は教室、「社会学概論」の1回目の講義である。
いまどきの大学生を相手に、面白くてスマートな講義を披露する。
こんな講義なら私も受けてみたい。
ノーブルで知的なユーモアがある素敵な先生・・・ここが鮮やかに描かれているからこそ、そのアブノーマルな私生活とのギャップが萌えるというもの。
そんな先生に一目で恋に落ちた栄田惣(さかえだ・そう)、二十歳。
身長184センチの陸上部で鍛えた立派な体格を持ちながら、気が小さい、内向的、臆病、いろいろ気にしすぎ・・・子供の時から泣き虫で、友達が転んでも自分が泣くという優しい性格。
「空気を読み過ぎる」性格のせいで、この年まで彼女ナシ。
そんないまどき希少なビュアな青年が、20歳も年上の同性に恋に落ちて、どうしたら近づけるのかわからない。
純情な青年の恋心は、アプローチしなくてもバレバレなのだが。
宮のほうは、男女問わずストーカーを招きやすい自分の体質をよく知っているので、あしらい方もよくわかっているはず、だったのだが・・・。
(以下微妙にネタバレあり)
]]>積木の恋 凪良ゆうhttp://yuki-noko.jugem.jp/?eid=5522011-12-06T16:33:00+09:002012-01-03T07:38:45Z2011-12-06T07:33:00Z プラチナ文庫2011年
医師(32)×詐欺師(21)
親に捨てられて養護施設育ち、中卒で社会に出たものの居場所がなく、男を手玉にとって金を巻き上げる「恋愛詐欺師」をなりわいとする蓮(れん)と、そのカモである加賀谷の純愛ストーリー。
世の中不公平だぜ...ゆきのこ凪良ゆう プラチナ文庫2011年
医師(32)×詐欺師(21)
親に捨てられて養護施設育ち、中卒で社会に出たものの居場所がなく、男を手玉にとって金を巻き上げる「恋愛詐欺師」をなりわいとする蓮(れん)と、そのカモである加賀谷の純愛ストーリー。
世の中不公平だぜ、持ってるやつから巻き上げて何が悪い、という蓮の視点で描かれているが、詐取した金はコツコツ貯金して「詐欺から足を洗って自分だけの家を買って犬と暮らすのが夢」という蓮の心根は、とってもまっとうなのである。
大病院の院長の長男である加賀谷はシンデレラストーリーによくある男前で大人な攻め様ではなく、ホモが親バレして勘当されるような要領が悪くて、人付き合いの下手なお坊ちゃまとして描かれている。
特に容姿が悪いとは書かれていないが、印象として見た目もぱっとしないイメージ(私の中ではなぜか三谷幸喜のようなルックス)。
まさに絶好のカモで、簡単に金を巻き上げられるのだが、あまりの不器用さに蓮も引き際を見極められないうちに、ずるずると居心地がよくなってしまう。
このままいい関係に?なんてことにもちろんなるわけはなく事態は急転して、蓮は逮捕される。
この話のいいところは、実刑になった蓮が、ちゃんと自分の罪を償ってから幸せになるところ。
凪良さんはこういう真面目なところが持ち味だと思う。
本当にいや〜な人間が出てこない。みんなそれなりに一生懸命生きている。
そういう意味では金の苦労が全くない人生を生きている加賀谷の設定がちょっと甘いかなという気もしないではないが・・・両極端な環境で育った二人の奇妙なバランスを描きたかったのではないかと。
そもそも加賀谷が金持ちでないと成り立たない話だし。
凪良さんはもう新人とは言わないかもしれないが、好調キープ中である。]]>第20回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭http://yuki-noko.jugem.jp/?eid=5512011-10-09T16:30:00+09:002012-01-03T07:37:19Z2011-10-09T07:30:00Z今年めでたく20回目を迎えた東京国際レズビアン&ゲイ映画祭、例年7月の暑い時期に開催でしたが、今年は震災の影響を受けて10月の開催となりました。
暑くもなく寒くもないベストシーズンだけに、他のイベントと重なってしまうというデメリットもありましたが、それ...ゆきのこ映画東京国際レズビアン&ゲイ映画祭、例年7月の暑い時期に開催でしたが、今年は震災の影響を受けて10月の開催となりました。
暑くもなく寒くもないベストシーズンだけに、他のイベントと重なってしまうというデメリットもありましたが、それでもなんとかやりくりして、今年は3本見ることができました。
【ロミオ】(2011年 ドイツ)
大都会に憧れて田舎から出てきたルーカス。
しかし手配されていた部屋は、なんと女子のナース寮!
ノンケ男子なら夢のような毎日も、ルーカスにとっては苦痛とストレスの連続。
ある日、ルーカスはセクシーでイケメンのファビオと出会い、恋心を抱く。(以上公式あらすじ)
これだけ読んだら、軽いタッチのコメディかなと思うじゃないですか。
ところが実際は性同一性障害を扱ったシリアスな話だったので、最初は戸惑った。
主人公は女性として生まれたけど心は男性、ホルモン注射や筋トレで肉体改造中。
男性としてファビオに近づいていく。
ファビオはゲイ寄りのバイですかね。
男女を問わずにモテまくるフェロモンだだ漏れ男(でも実はいいおうちのお坊ちゃま)。
男が好きなら女のままでいいんじゃね?と思うのはヘテロの人間だけではなく、レズビアンもゲイやっぱりそう思うわけですよ。
ゲイもビアンもルーカスがトランスセクシャルと知った途端、嫌悪感をむき出しにして差別する。
セクシャルマイノリティの中のさらにマイノリティ。
でもそうじゃない。
ルーカスは「男になりたい」のではなくて、生まれたときから男なのだ。
それも男として男が好きな男。
やっかいだけど、性癖ってそういうもんでしょ。
ただし肉体という入れ物がエラーで、つまり彼にとっては女のぬいぐるみを着ているような状態なのね。
早く脱いで本当の自分になりたい・・・性同一障害とはそういうことなんだと理解した。
ルーカスを演じているのは男優です。
最初からそう思ったんだけど、見ているうちにだんだんわからなくなってきた。
どっち??
胸のサポーターを脱ぐと巨乳だったりする。
え?女優?!って一瞬思ったけど、そんなわけはなくて、巨乳はフェイクとCGだったようです。
その心は男だけど体はまだ女という複雑な性別を演じた主演俳優は、「トランスアメリカ」で、MtF=元男で性転換済み女性を演じた女優といい勝負だなと思った。
【LAに恋して】(2011年 アメリカ)
スターをめざしてロサンゼルスにやってきたゲイのアダム。親友(女)のキャンディの家に居候してオーディションを受け続けるが落ちまくり、ゲイポルノの制作会社でアルバイトを始めたあたりからお約束の転落が始まり、最初はゲイ雑誌のグラビアモデル、次がゲイポルノ出演、ついにセレブ相手の出張ボーイに。
そして出張ボーイとして呼ばれて出会った有名スターのジョンと恋に落ちる・・・。
なんだこのBLのようなわかりやすい俗な展開は。
でもこのわかりやすさ、俗なところこそ、この映画のいいところだ。
誰が見てもわかる、誰が見ても笑える、そして「んなことありかよ」と思いつつスカッと爽快なハッピーエンド。
そんな中でアダムがLAに来て最初にできた彼氏、ゲイポルノの監督でカメラマンのニックはいかにもゲイゲイしい業界人でインパクト大。
言葉巧みにアダムを口説いて裸にむいて、まんまとゲイ向けグラビアを撮影してしまう手管は、うわ〜本物!って思ったら、この映画の監督のキャスパー・アンドレアス本人だった。
そのジャンキーで変態なところも・・・強烈だった。
わかった。
こういう変態っぽい監督が撮る乙女チックなシンデレラストーリーだからいいんだな。
毒はどこかに隠されているけど、ゲイが見てもノンケが見ても楽しめる映画。
上映後、そのシンデレラを演じたマシュー・ラドウィンスキくんがトークセッションに登場。
]]>きのう何食べた?5 よしながふみhttp://yuki-noko.jugem.jp/?eid=5502011-09-30T16:29:00+09:002012-01-03T07:36:50Z2011-09-30T07:29:00Z 講談社2011年
先日、やっと「風と木の詩」13冊を処分した。
今読んだらどうだろうかという気持ちに、二度と読みたくないという気持ちが勝ったのである。
ちなみに初版で13巻揃ってるので、まんだらけにでも売ろうとか思っていたのだが、13巻で完結ではなか...ゆきのこコミックス 講談社2011年
先日、やっと「風と木の詩」13冊を処分した。
今読んだらどうだろうかという気持ちに、二度と読みたくないという気持ちが勝ったのである。
ちなみに初版で13巻揃ってるので、まんだらけにでも売ろうとか思っていたのだが、13巻で完結ではなかったということを今さら知って、がっくり。状態も悪かったので廃品回収に出しました。
13巻でリタイアしてたんだな私。
悪いけど、そもそも竹宮恵子はあまり好きな漫画家ではないのだ。
それなのになぜ「風と木の詩」だけは読んでいたかというと、ほかになかったからである。
あの時代に、誰も描かなかったことを描いたことは立派だと思うけど、当時から「私が読みたいのはこーゆーんじゃないんだけどなあ」という気持ちは確かにあった。
あらゆるテイストのホモ漫画がより取り見取りの今は本当に天国だ。
生きててよかった!と本気で思う。
よしながふみの「きのう何食べた?」は、主人公がゲイカップルなのに、恋愛や性愛を描いているわけではない。
青年誌連載の、とても実用的な料理漫画・・・これは「風と木の詩」から35年、日本の同性愛漫画の一つの到達点かもしれない。
5冊目の今回は、「ジルベールのような美少年」が登場。
よしなが先生は何を見てコレを描いたんだろう?
もはや似てるのか似てないのかわからない・・・ジルベールという記号。
美少年でなければ同性愛漫画が許されなかった時代があったんですよね、という皮肉がこめられてるように感じるのは私の思いすごしであるあろう。
普通に働いて、毎日一緒にご飯食べて暮している40代のゲイカップル。
悩みはもはや恋愛関係ではなく、老いた親のこととか健康のとことか。
同棲3年目にして初めて健二の両親のことを知る史朗。
そこが夫婦と同棲の違いだな。
でもついにマリッジリングを作って、一歩前進?
ドラマがないようであるこの二人の「私生活」をいつまでも見ていたい。
]]>交渉人は愛される 榎田尤利http://yuki-noko.jugem.jp/?eid=5492011-08-14T22:32:00+09:002011-08-14T13:45:42Z2011-08-14T13:32:00Z SHYノベルズ2011
ヤクザ(33)×交渉人(34)
やっぱ、人間なにごとも最後まで諦めたらダメなのよ。
諦めたときが終わり・・・ということを私に教えてくれたこの夏のなでしこJAPAN・・・と、交渉人・芽吹章。
「ラブ&トラスト」シリーズが終わったと...ゆきのこ榎田尤利 SHYノベルズ2011
ヤクザ(33)×交渉人(34)
やっぱ、人間なにごとも最後まで諦めたらダメなのよ。
諦めたときが終わり・・・ということを私に教えてくれたこの夏のなでしこJAPAN・・・と、交渉人・芽吹章。
「ラブ&トラスト」シリーズが終わったときはがっかりしたけど、その後に始まったこの交渉人シリーズは、シリーズとしての面白さ、完成度は大きく進化したと思う。
記念すべきシリーズ1作目「交渉人は黙らない」のプロローグは、一人の老人(実は周防組組長)が、甘味屋で抹茶白玉スペシャルパフェを食べながら、交渉人・芽吹の仕事ぶりを偶然耳にするというシーンだった。
そしてその偶然がラストのオチに繋がるのだが・・・何回読み返しても、この主人公の登場のさせかたは上手い!と思う。
このシリーズ、毎回、芽吹の依頼された仕事が兵頭の利害と対立して、二人の間に緊張が生まれるというのがお約束だが・・・最大の危機は前作で乗り越えたので、さすがにもう使わないかなと思っていた。
ところが、予想に反して今回はこれまで以上にストレートな利害の対立になる。
1作目の悪役である万里雄は、一つもいいところのない完全なヒールで、シリーズ7作目までしぶとく生き残り、それどころか死期の迫った万里雄の父にその救出を依頼されてしまう。
自分でも悶々としてるけど、キヨにもドM認定されちゃったけど、なんでそんな仕事を引き受けてしまうのか。
そもそも正義でもなんでもない、ヤクザ同士の揉めごとに介入するなんて・・・ヤクザの頼みというより、同級生の父親の頼みを断れなかった芽吹章、寅さんマニアだけあって人情の人だから?
いや、やっぱりドMなんでしょう。
困難なほうへ困難なほうへ自分を追い込んでしまう。
そしてそんな芽吹を、そういう男なんだよねと、芽吹ネゴオフィスのメンバーも、兵頭も、そして読者ももうすっかり理解している。
話は早い話、薬物をめぐる万里雄と周防組のメンツの問題で、つまりシリーズの出発点に繋がっている。
でも芽吹と兵頭の関係は、あれから6冊+スピンオフ1冊+小冊子1冊分の歴史を経て確かなものに変わった。
16年ぶりの再会シーンはあんなだったのにねえ・・・いまやお互いを知りつくし、「愛と信頼」で結ばれたパートナーである。
そして最後に、そんな二人のことをよく理解している老人と芽吹とあんみつで、一つの地点に到達する。
言ってはなんだけど、エダさんでこんなにうまくまとまったシリーズはかつてない(笑)。
プロローグとエピローグだけが芽吹の一人称ではないのがこのシリーズの様式だが、最後の最後に思いがけない甘〜いエピローグ、ヒューヒュー!と冷やかしつつ、ブラボーと拍手喝采の着地である。
話はここでひと段落ということで、この話の続きは書かれないかもしれないが、芽吹章という人間は、まるで実在の人物のように私の中に生きていて、今日も一人ボケ突っ込をしながら、もうからない仕事に走り回り、兵頭の舎弟たちと漫才を繰り広げている。
今日もまた、危険な目に遭ってるかもしれないけど、心配はしていない。
兵頭(と七五三野)がついてるからね。
]]>ペーパームーン 剛しいらhttp://yuki-noko.jugem.jp/?eid=5482011-07-31T09:25:50+09:002011-07-31T00:25:50Z2011-07-31T00:25:50Zご無沙汰しました!
この記事を途中まで書いたところで、1か月半が過ぎてしまいました。
なでしこ世界制覇!を見届けたところで、何事もなかったように(?!)再開します。
ガッシュ文庫2011年
医師(29)×無職(26)
「ムーンライト」の続編。
...ゆきのこ剛しいら
この記事を途中まで書いたところで、1か月半が過ぎてしまいました。
なでしこ世界制覇!を見届けたところで、何事もなかったように(?!)再開します。
ガッシュ文庫2011年
医師(29)×無職(26)
「ムーンライト」の続編。
(こちらを先に読んでしまうと、ムーンライトのネタばれになってしまうのでご注意を)
人間って、明日も今日と同じように目が覚めて心臓が動いていると信じているけど、実は自分が知らないうちに深刻な不具合が進行していて、突然止まるってこともあるんだよね。
去年と今年と続いて2人、昨日まで生きてた人が、病院以外の場所で突然病死するという事態があって・・・世の中にはあることだけど、自分の友人知人だとやっぱり驚きますよ。
大災害で一度に多くの人が亡くなったり、身近な死を体験すると、人間は無事に生きてるだけでも奇跡、すべてに感謝して今日を生きなくては・・・とそのときは思うのだけど、気がつくとどうでもいいことを心配したり悩んだりしている。
きっと、そういうふうにできてるんだな。
人間は誰でも必ず死ぬ、しかもいつどういう死に方をするかわからない、だから明日死んでも悔いないように毎日を生きなくては、などということをいつも本気で考えてちゃ、生きているのが大変すぎる。
だからどうでもいいことを心配するのをやめられないのね。
浜辺で倒れていたところを医師である一樹に助けられ、亡くした記憶も取り戻し、最新のバチスタ手術が成功して元気になった浩之。
長くは生きられないかもしれない。
でも、余命何年というほど限定されたものでもない。
長くない人生を大切に生きようとしている浩之の最大の悩みは・・・同棲している彼氏との性生活。
満足させてないんじゃないかとか。
一樹も、浩之がそのことでプレッシャーを感じているんじゃないかと悩んでいる。
まあ・・・なんと言うかですね。
一樹は同僚に、浩之はカウンセラーに、それぞれこっそり相談しているのだが、他人からみれば「おまえなあ・・・」とか、「セックスレスの夫婦はたくさんいますよ」という反応である。
浩之は、病気のために母親に幽閉されて育てられた。
そのまま人並みの青春も知らず、結婚して家庭を持つこともできず死んでしまっていたかもしれないのだ。
それが優しくて優秀な医師という理想的なパートナーと出会い、誰からの反対もなく彼の嫁になり、しかも自分は莫大な資産を相続している・・・病気を差し引いてもかなりの幸せを手にしていると思うのだが、それでも人は「入れる」「入れない」とか、小さな?ことに悩むものなのだ。
それは浩之が、ついに人間らしい「幸福」を手に入れたということなのかもしれない。
]]>理髪師の、些か変わったお気に入り 榎田尤利http://yuki-noko.jugem.jp/?eid=5472011-05-29T17:35:00+09:002011-05-29T09:58:53Z2011-05-29T08:35:00Z 徳間書店キャラ文庫2008年
理容師(25)×美容師(25)
いまだに収束のめども立たない福島原発は・・・つまり日本はこの先どうなっちゃうんでしょうか?
日本が無事だった時代に読んだものが恋しい・・・というわけで大好きな藤井沢商店街シリーズを5冊...ゆきのこ榎田尤利 徳間書店キャラ文庫2008年
理容師(25)×美容師(25)
いまだに収束のめども立たない福島原発は・・・つまり日本はこの先どうなっちゃうんでしょうか?
日本が無事だった時代に読んだものが恋しい・・・というわけで大好きな藤井沢商店街シリーズを5冊一気に再読。
2004年の「ゆっくり走ろう」から始まって、完結が2008年の「理髪師の、些か変わったお気に入り」
・・・もうそんなに昔なのね。
そしてあらためてこの完結編だけブログに取り上げていないことに気がついた。
その理由は、最初に読んだとき「え?こういう終わり方?!」って、ちょっと消化不良だったから。
でも時間をおいて読み直してみると、最後をこういう形にしたのは意味がなんとなくわかってきた。
シリーズはそれぞれ商店街で商売し生活している人たちが主人公なのだが、全員が地元っ子ではない。
?ゆっくり走ろう(2004年) 自動車ディーラー×自動車メーカー社員
立浪は長く藤井沢営業所にいて地元になじんでいるが、地元民ではない。
里見は数ヶ月の短期赴任。
?歯科医の憂鬱(2005年) 板金工×歯科医
穂高は地元の元ヤン、三和は歯科医院に雇われていて都心に実家がある。
穂高は地元で知られた存在のため、完結編でも大活躍。
?ギャルソンの躾け方(2006年) カフェオーナー×喫茶店主
篠宮は都心から来た御曹司、水樹は地元喫茶店の子。
高校卒業後、家をを出て都心のカフェで働き、親の病気で地元に戻る。
?アパルトマンの王子(2007年) 王子×不動産業
世羅はアメリカ育ち、優一は家業が地元で続く不動産業。
?理髪師の、些か変わったお気に入り(2005年) 理髪師×美容師
どちらも地元の床屋とパーマ屋の子で、高校卒業後、それぞれ進学、就職で地元を離れ、地元に戻ってくる。
以下ネタバレ注意]]>葛城副編集長の最後の賭け 高遠琉加http://yuki-noko.jugem.jp/?eid=5462011-05-23T22:50:00+09:002011-05-23T13:55:49Z2011-05-23T13:50:00Z 角川ルビー文庫2011年
編集者(31)×会社員(29)
「成澤准教授の最後の恋」のスピンオフ。
文芸誌「レクトゥール」の豪放磊落な副編集長は、実は名家の出だったのである。
裕福な家に拾われて養育された薄幸の孤児が、身分違いの恋心を隠して恩ある主に忠誠...ゆきのこ高遠琉加 角川ルビー文庫2011年
編集者(31)×会社員(29)
「成澤准教授の最後の恋」のスピンオフ。
文芸誌「レクトゥール」の豪放磊落な副編集長は、実は名家の出だったのである。
裕福な家に拾われて養育された薄幸の孤児が、身分違いの恋心を隠して恩ある主に忠誠を尽くす・・・というようなモチーフは、普通は時代もので書かれる。
かわい有美子の「上海」とか。
「成澤准教授・・・」は、自信過剰の攻めが、純情な受けに軽い気持ちで手を出して抜き差しならなくなる・・・という、ある種王道の面白さだったけど、今回は現代ものに時代錯誤な人たちが登場し、価値観が交錯するところが面白い。
「おかえりなさいませ夏彦様」
どこの執事カフェだよという時代がかった物腰の諒(りょう)は、葛城夏彦の父親の実家である地方の名家の使用人の息子で、幼い頃から本家の跡取り息子・和也に召使のように仕えている。
夏彦は、前近代的な地方豪族のしがらみを嫌って飛び出した本家の三男の息子・・・つまり父の代からの都会人で、葛城本家の風習を「いまどきそんな」というしらけた目で見ている。
二人はお互いに子供の頃から知っているのだが、10年前、和也の起こした交通事故の身代わりを諒が引き受たことに憤った夏彦は、以来本家とは縁を切っていた。
ところがある日突然、諒が夏彦の家にやってきて10年ぶりに二人の関係が動き始める。
【以下ネタバレ注意】
]]>真夜中クロニクル 凪良ゆうhttp://yuki-noko.jugem.jp/?eid=5452011-05-05T22:07:00+09:002011-05-05T13:14:06Z2011-05-05T13:07:00Z気がつけば5月、そしてゴールデンウィークも後半になってました・・・。
あれからずっとARUKUさんの「虹色村のチロリ」について何か書こうとひと月以上考えていたんだけど、結局うまく書けず・・・ギブアップ。
気を取り直して、凪良さんの新レーベルからの新刊...ゆきのこ凪良ゆう
あれからずっとARUKUさんの「虹色村のチロリ」について何か書こうとひと月以上考えていたんだけど、結局うまく書けず・・・ギブアップ。
気を取り直して、凪良さんの新レーベルからの新刊でリスタートします。
リリ文庫2011年
紫外線にあたると皮膚が火傷状態になる病気の新名(ニーナ)は、ひどいいじめで小学校から不登校になり、ずっと引きこもって暮している。
学校にも行けない、就職もできない、恋愛も結婚もできない・・・18歳にして人生に絶望したニーナは、夜の公園で知り合って自分に懐いている小学5年の陽光と、ブサイクな野良猫を車に乗せて、星降る夜に無免許運転で走り出す・・・。
「ニーナ、これからどこに行くの?」
「この世の果て」
でもニーナはこの世に果てなどないことを知っている。
二人の出逢いから一夜の家出までを描いた「真夜中クロニクル」、その後、16歳と23歳になった二人の「月が綺麗ですね」、19歳と26歳の「LOVE SONG」の3話から構成されている俳優の卵と音楽家の卵の成長物語。
11歳にして美しい年上のニーナに恋をした陽光は、早く大人になってニーナを守れる男になると誓う。
「年の差・年下攻め」にはよくある設定だが、「大人になる」ってそんなに簡単ではない。
陽光は有名な子役だったが、そこから大人の俳優への転換がうまくいかず、芽が出ない。
ニーナは、ソングライターとして仕事を始めるがこれも容易な道ではない。
ありふれたBLだと、どっちかがわりと簡単に成功を手にしてしまい、あとはお互いの恋愛感情の話になるものだけど、若い二人の足元は未完成で未確定で、相手のことを見失ってばかり。
そんな若さの悪戦苦闘を書いてる。
本人たちは悩んでるんだけど、読んでるほうは「若いって素晴らしい」と思ってしまう・・・これが凪良さんのうまいところ。
大人目線で二人を見守る脇役もいい。
ブラジル人の彼氏とバリに旅立ってしまった親戚のミツさんもよかったが、ニーナを口説きまくる映画監督の唐崎、このまま監督に一度食われてしまえ、と思うくらいいい仕事ぶりでした。
11と18で出会って、お互いにお互いしか知らない純愛カップルなところもいい。
もしこの作家をまだ読んだことがなかったら、この話から読むのがいいかもしれない・・・と思うほど、文句のつけどろない会心作。]]>