角川ルビー文庫2001年
医大生(19)×菓子職人(24)
札幌の古本屋で・・・あれ?これって読んでないよね?と思って連れて帰ってきたけっこう古いルビー文庫。
隆文(たかふみ)と遥司(ようじ)は幼なじみ。
5歳年上の遥司は、高卒で菓子職人となって東京で修業ののち地元に戻り、弟の親友だった隆文と恋人同士になった。
独立して店を持とうとしている遥司に、東京から師匠の三嶺(みむね)がやってきて、神戸支店の店長になれと強引に引き抜きこうとする。
さらに三嶺は、隆文に「おれが遥司の初めての男だ」と宣戦布告。
遥司を巡って、昔の男VS今の男のバトルの火ぶたが切って落とされる。
この「世界的に有名な天才パティシエ」のオトナゲのなさが面白い・・・あれ?この人って
「好きって100回言ってみな」の攻め?
「小説家シリーズ」が完結したときに、こちらも再読しようと思ったんだけど、ルビー文庫のコンテナがあまりに深い地層に入っていたので取り出せなかった。
こんどこそやっと発掘して「好きって100回言ってみな」「いいから黙って愛されな」を再読。
やっぱりこの三嶺だったんだ・・・でも話は全くリンクしてない。ここではただの当て馬である。
まだ何者でもない学生の隆文は、成功した大人である三嶺の登場に動揺するが、遥司の隆文への気持ちは少しも揺るがない。
つまり最初からデキている甘いカップルにちょっとだけ波が起きて、結局何事もなく甘く終わるだけの話なんだけど、甘さが濃厚なのは、この話そのものがいくつもの物語の「その後」「それ以前」になっているからではないかと思う。
小学校のときから好きだった初恋のお兄さんが、東京に行ってる間に中学生から高校生になり、色っぽくなって帰ってきたお兄さんとやっと恋人になった隆文。
上京して憧れのパティシエの弟子になり、製菓技術も恋愛も手取り足とり教えられたけれども、「これは違う」と気付いて別れ故郷に戻り、知らない間に男になっていた幼なじみと結ばれた遥司。
さらに、隆文はこの段階では学生だけど、数年後には医師になることが決まっている。
医師とパティシエのカップルになるわけで、人生そこからいろいろ・・・そんな二人の蜜月の一コマなのだ。
しかし、三嶺は見かけによらず「かわいいもの好き」で、高校時代から目をつけていた弟子に振られたあと、もっと小さい子に一目惚れしちゃったわけだ。
やっぱりこういう自信家には、いつかライバルとなる同業者よりも、「甘いものキライ」くらいの子のほうがよかったんだよ・・・と納得。