リブレBBN 2011年
暴力団組長(34)×暴力団組長(28)
気がついたら1か月以上のご無沙汰でした。
3月11日以前の生活が、もう遠いことに思えます。
「
幻だったんだね、ぜんぶ」
震災後、よく行く飲食店でランチをしていたら、隣の席の女性がぽつりと言いました。
ダイヤどおりに電車が来て、落雷でもない限り停電の心配もなく、水道水は安全。
都心は深夜までネオンで明るく輝いて・・・当たり前だと思っていたことはすべて、危険な原子力発電が見せていたイリュージョンだったんだね・・・という。
私にとって、浮世の憂さを忘れさせてくれるファンタジーであるはずBLも、原発事故というシリアスすぎる現実の前にはなかなか効力が発揮されず・・・やっと英田さんの新刊でちょっと浮上。
組長×組長というカップルで、いわゆるBL的ハッピーエンドにはなっていないという、久々に英田さんらしい話を読んだ気がする。
病に倒れた父親のあとを継いで若くして組長になった深弦(みつる)にとって、忘れられない男、鼎(かなえ)が組長になって戻ってきた。
かつては組長の坊ちゃんと世話係の舎弟だった二人、ぶっちゃけ、お互いに最初からLOVEだったのに、仁義がすべてのヤクザの世界は二人の道を分かち・・・敵として戻ってきた鼎に肉体関係を強要される。
こういう展開だと普通は、相手の気持ちがわからないまま受けが翻弄される。
そしてなんだかんだあって、攻めの本心が割れて「そうだったのか」と二人の気持ちが通じてハッピーエンド、となるのが王道。
でも英田さんの場合、男が口に出さない本心を正しく読むことが多い。
そこが英田さんの小説のいいところであり好きなところなんだと、あらためて思った。
関係を続けていくうちに、鼎は自分を守るために戻ってきたのではないかと思い始める。
10年前に自分を傷つけて出て行ったのも本当は・・・と。
それでもド石頭の鼎は、最後まで自分の仁義を守り抜き、けして満弦の望んでいる愛の言葉を語らない。
う〜ん、なんという頑固者!だけど、鼎は行動ですべてを表し、それを満弦もわかっているからこれでいいのだ。
初期の英田さんってこういうかんじだったなあと、久々に初心に戻り「今宵、天使と杯を」を再読したりして、ただいまBL脳のチューニング中です。