少年(16)×弁護士の卵(24)
ゲンキノベルズ2001年
久々の新刊『長靴をはいた黒猫』を何度も読み返し、さらに既読本も読み返してすっかり佐藤ラカン祭り。
この『逃亡』が最初に読んだ佐藤ラカンだった。
そのときの読書ノートを見ると
「文体に魅力はあるが、登場人物が煩雑すぎて小説としてのまとまりに欠ける」とある(2004年7月17日。まだブログを始めていなかったので言いたい放題)。
いや、そうじゃないよと今読み返してみて思う。
たまたま銀行強盗に遭遇し、人質になってしまった椋太(りょうた)・・・強盗は施設から逃げてきた少年だった。
偶然のなりゆきから「逃げる」ということに目覚める椋太。義兄の性的虐待から・・・弁護士一家の重圧から・・・具体的には銀行強盗とその人質を追う警察から逃げているわけだが・・・逃げて逃げてこれまで囚われていたことからどんどん自由になっていく。
一方追いかける義兄の梓也(しょうや)と、それを追う刑事の安西と吉川。
安西は「汚ギャル」ならぬ「汚オヤジ」だが、フェロモン垂れ流しの野人で、部下の吉川にはセクハラやり放題、そしてクールビューチーな梓也兄貴にもイケナイことを・・・。かなり手癖の悪い男です。
さらに椋太の逃亡の手助けをする謎の大金持ち佐伯も、ヤバさでは梓也以上。
普通のBL作家だったら、このクセのある脇キャラたちで何冊も書いてシリーズにするところだが、これ1冊きりなんだよね。
そういうところがこの人あんまりBL書きに向いてないのかも・・・と思ってしまうところなのだが・・・萌えどころは満載です。
もっととりとめのない話だったような気がしていたが、最後にそれから7年後の結末もあり・・・なんだ、きれいにまとまっているではないか。
ラカンの中では比較的ボーイズラブらしい話ではないか、と思います。