ハイブリッド狼(生後8年・人間換算26)×高校生(16)
リンクスロマンス2008年
『蛇恋の禊』を読んですっかり沙野モードになり、キワモノ警報のため慎重になっていたこの「獣の妻乞い」も一気に読んでしまった・・・。
「獣○はオッケーですか」と問われれば、大好物ではないけれど生理的にダメというほどではない・・・と思う。生理的にダメなのは私の場合、食品を使ったプレイと、ピアッシングものですね。
たしかに交尾シーンもあるけど、獣○モノかっていうとちょっと違うような気もする。
獣○っていうのは「陵辱」とセットになってはじめてエログロなのであって、作者が言ってるとおりこれは「鶴の恩返しの狼版」+「人魚姫」なのだ。(最後はこのまま「フランダースの犬奥多摩版」になるかと思いましたよ)
なぜなら獣とはいえ人間型で言葉を話し、意志の疎通があって愛のある行為だから。
むしろ「蛇恋」における人格崩壊している異母兄の陵辱シーンとか幻覚の中での大蛇とのシーンのほうが獣○っぽかった・・・というか、こっちを先に読んだからあんまり抵抗なかったのかも。
子犬(狼)のときに瀕死の重傷を負っているのを助けてくれた小学生・尚季(なおき)に、8年後に人間の形になって会いに来た飛月(ひづき)。
見た目は獰猛だが、心は仔犬、ただただいつも尚季のそばにいたい、ずっと一緒にいたい一心でいろいろズレたこともするけれど、尚季のためならなんでもする忠実なワンコ。
むしろトンデモなのは設定です。
死刑制度が廃止された近未来、何人殺してもなにをやっても死刑にならず、刑務所が定員オーバーで凶悪犯がすぐに出所して犯罪を繰り返すため、国家プロジェクトとして遺伝子操作して半人半狼のハイブリッドを作り、野犬に襲われたことにして犯罪者を「処刑」している。狼人間は、脳内ホルモンの分泌をコントロールして人間の姿になることができる・・・。
おいおいっと思いながらも振り落とされずについていけたのは・・・動物は自分の命が飼い主より短いことを知らずに生きている(たぶん)。けれどこの狼たちは自分たちの命が短いことを知っていて、だからこそ一時も離れずに大好きなご主人様と一緒にいたいとひたすらに願う・・・その気持ちがとても切ないのだ。
飛月はいつまで人間型でいられるの?とか、お父さんがドイツから帰ってきたらどうするの?とか、結末にちょっと疑問はあるんだけど、私にとっては予想外に「いい話」でした。