俳優(20)×美容師(28)
Bプリンス文庫 2009年
吉田ナツ、久しぶりの新刊。とりあえず復活がめでたい。
ゲイのヘアメイク、理知(りち)は、学生時代の同級生で芸能マネージャーの大久保から、駆け出しの俳優、徹のスタイリングを頼まれる。
徹は、美人で気が強くてエロい年上のお姉さんに夢中になってしまうが、理知はまだ若くノンケの徹との間に慎重に距離をおこうとする。
年下のひたむきな求愛を恐れ、「一時的なセックスフレンド」とわりきった付き合いをしようとする「大人」の臆病さ・・・これも一つのパターンといっていいくらいよくある構図だけど、若い恋人の気持ちをもてあそんでいる自分のずるさを自覚している理知の迷いを丁寧に描いていることと、このお姉さんの受けでありながら戦闘的なベッドテクがなかなかエロくて素敵。
「そんな言葉で俺をいたぶるのは百年早いんだよ」
若い男の性欲に流されまいと、ベッドではけして主導権を渡さずギリギリまで頑張ったから、最後に「えーい、もういいや」と覚悟を決めるところが生きる。
ただ、これが榎田尤利ならもっとリサーチして、売れっ子ヘアメイクらしいボキャブラリーを散らすだろうし、剛しいらならもっと短い話でもこの2人がどんな家庭でどう育てられたかがわかるように書くだろう・・・と思ってしまう。
私にとって榎田・剛クラスと、それ以外の差がなかなか縮まらないのはそういうところなんだよね。
理知の親友、スキンヘッドの巨漢という設定の大久保のビジュアルが見たかった・・・。