ディアプラス文庫2010年
准教授(34)×大学生(20)
周囲からは女の子にモテモテと思われているけど実はチェリーで、本人はチェリー脱出に悶々としている・・・そんな話はいくつか読んだけど、どうもいまひとつ期待はずれというか・・・そもそも私ってこの設定があまり趣味じゃないのかも?
チェリーのまま焦りも悩みもなく淡々と年を重ねていた如月先生みたいな人は思い切りツボなんだけどなあ・・・と思っていたら、月村さんの新刊がチェリーくんものだった。
大学生の岩佐は、顔もよく頭もよく家も金持ち、人もうらやむモテモテの王子様・・・ということになってるけど、そこから間違ってるよね。
そこまで条件が揃っていて、女の子にやさしいならともかく、傲慢な毒舌家だったら「ナル」って陰口叩かれるのがオチで、自分で思うほど女子にもてませんって。
まあともあれモテると思ってる自意識過剰な王子様は、自分が大好きナルシストだからなかなか性体験ができない。
あせればあせるほどチャンスは遠のく・・・という負けのスパイラルをドタバタとコメディタッチで描く・・・月村さんって繊細でシリアスな話を得意とする人だったと思ったけど、へ〜〜こういうのも書くんだ、という驚きが一つ。
話は岩佐視点で書かれているけのだが、実際のところ作者の視点はそんな王子様の独り相撲を下心満載で眺めている一回り以上年上の阿部先生にあり、読者の視点もおのずとそこに重なる。
岩佐は同世代の女子から見たら性格悪いヤツなんだけど、大人目線で見れば、努力の方向を間違えているかわいそうな子・・・努力家ではあるんですけどね。
そんな獲物を巧みに「エサ箱」に囲い込んで、20歳のバージンを狙う阿部先生は飄々としているようで、悪い男だなあ。
だってこれもし相手が女子だったら問題ですよ。教え子でもないのにいつも研究室に二人きり・・・いまどきの大学はセクハラ・アカハラ問題に敏感ですからね。
岩佐も、ほんとにこんなオジサンでいいのかもう一度よく考えてみたら?
とか言いつつ、旅先で楽しく読めた1冊でした。