フリーター(28)×会社員(40)
海王社 ガッシュ文庫 2008年
satoさんのブログでおいしい「オヤジ受け」ものがあると紹介されていたのでさっそく食いつく。
もうすぐ41歳になる大手ハウスメーカーの課長・大黒谷正広(だいこくや・まさひろ)、別に理由はなく一人でいるのが苦ではない・・・というより快適なひとり暮らしを営んでいるゆえに独身という・・・いるいる。こういう人は周りにいくらでもいますよ。
三高とまでは言わなくても大卒で普通に正社員で地位も収入もそこそこに安定している・・・だからこそ独身生活が快適なんだよね。今はそういう世の中ですよ。
私が男だったらきっと結婚しないわ・・・いやそういう話じゃなくて、そんなよくいる独身オヤジが自分とまったく違う世界で「運命の人」を見つけてしまう話。
大黒谷がトラウマ持ちでも超エリートでもなく平凡なオヤジであることがこの話の魅力。
偶然知り合ったバーテンダーのステラ(日本人)の、へそピアスやタトゥーを見て「自分の身体を大切にしなくちゃダメだ」とウザイ説教をするところが好きだ。オヤジはこうでなきゃ。それをまたステちゃんが「ウザい」と思うどころか「そんなこと言ってくれる人は初めて・・・」と感激しちゃったりするところが、早くも「破れ鍋にとじ蓋恋愛」を予感をさせる。
もしステラが女性だったら大黒谷もご近所だからという理由で簡単に自宅には入れないだろうし、料理を作らせたりはしないだろう。
最初からゲイだと知っていても自分はノンケでステラの守備範囲ではないと思っているから何の警戒心もなくテリトリーに入れて、「おかえり」と待ってくれている人のいる生活、一緒に食事をする生活の楽しさをついに知ってしまうのである。
大黒谷に唯一結婚プレッシャーをかけるのが母親なんだけど、だからって初対面の他人にそこまで暴言を吐くかな、っていうのがちょっとやな感じだったけど、その母親に無理やり見合いさせられた相手の女が編集者で、ちょっとオーバーだけどそうそう編集者が見合いするとこういう展開になるんだよ、さすが作家さんはよく知っていらっしゃる、と思いました。
最後がちょっと尻切れというか、ついに二人が思いを遂げて、え?これでハッピーエンド?という尻すぼみな結末なんですが、これはもしかして続編を書く気満々なのでしょうか?