キャラ文庫2002年
画廊社長(33)×仏師(28)
「主治医の采配」を読んでいいなと思った水無月さらら、今年の夏、既刊をまとめて読み、夏休み特集に仕立てようと思ってたのですが、猛暑に集中力と思考力を持っていかれ・・・結局できないまま夏は過ぎてしまいました。
ちなみに読んだのは
「オレたち以外は入室不可」
「正しい紳士の落とし方」
「九回目のレッスン」
「恋愛小説家になれない」
「永遠の7days」
「オトコにつまづくお年頃」
「お気に召すまま」
「クラッシュアイス」
「奇跡のオブジェ」
どれも面白くて上手いんだけどどう書いていいか・・・と思っているうちに、800年前の仏像と50代の大学教授が恋に落ちる「
奇跡のオブジェ」と「
クラッシュアイス」(冷凍保存されていた兄ちゃんを解凍→生き返る話)を読んだら、ほかの話の印象がどこかにふっとんでしまった・・・。
・・・気をとりなおして、そうそう、たしか仏師の話があったはず。
これがまたこれまで読んだ水無月作品の印象を全部チャラにする
ドロドロのシリアスだった。
老舗画廊の青年社長・京也は、新進気鋭の仏師の作品展で見た仏像を、死んだと聞かされていた義弟の作品だと直感する。
祥英(はな)は、高名な仏師の愛人の子で、幼いときに
実母に舌を切られて口がきけず学校にも行ったことがない。
(このへんでお腹いっぱいになりそうだが、まだまだ)
才能をねたむ次兄によって
地下牢に幽閉されひたすら木を彫り、その作品が次兄の名で発表されていたのだ。
そのことに気がついた京也は、かつて兄弟として暮したこともあるはなを地下牢から救出する。
そこは(そこだけは)なかなか胸のすく展開なのだが・・・口がきけない
美貌の天才仏師・はなの誰も知らない内面が怖い。怖すぎる。
犬好きな方も読まないほうがいいと思います。
あらゆる障害を排して2人が一緒になるという意味ではハッピーエンドだけど、後味は悪いです。
それでも、これこそが水無月さんの持ち味100%を出したひとつの形なんじゃないかと思った。
ほかの作品が手を抜いてるというわけじゃないけど、いつも少し手加減して書いてる・・・手加減しないと遠いところに飛んでいってしまうから・・・わりと危険な作家です。
今後も要注意。